2020_0614_162053 KS73 エコノミカルトラック
汽車製造会社はKS50、KS51、KS56型と順次空気バネ台車を開発・改良し、京阪の1700系、1810系という特急用電車に採用されて良好な成果を挙げた後、小変更したKS58型台車を通勤電車の2000系にも採用しました。通勤電車では乗心地も去ることながら乗客の数が大きく変動する通勤電車では、空気バネの空気を出し入れすることで、乗客の多少にかかわらず、車高が一定に保てる→ホームとドアの段差が殆どなくなり、安全面に大きく貢献する、という利点も明らかになりました。
ところが一日中走り回っている特急電車と違い、朝晩のラッシュだけが忙しい通勤電車は昼間は昼寝をしているくせにラッシュ時は数が要る、という特性があります。どうしても従来の金属バネ台車に比べて高価につく空気バネ台車を通勤電車に普及させるのには費用面がおおきなネックになってきます。
空気バネが乗心地に大きく貢献することは解りましたのでなにも軸受のところまでバネは要らないのではないか、という発想で考えられたのがこのKS73型台車です。軸受のところのバネは無くなっていますが、完全にフレームにガチガチにくっついていると線路の凹凸に追随できずに脱線する恐れがあるので軸受の周囲とフレームの間にゴムが巻いてあるのとフレーム自体も撓むように設計してありある程度は軸受も動けるようになっています。
真ん中の空気バネのところも、従来のKS58やFS327Aでは、車両左右方向のショックを吸収するため、台車のフレームからブランコのように吊り下げた揺れ枕と呼ばれる台に空気バネを載せ、そこに車体の体重をかけるようになっていましたが、このKS73では台車のフレームの上にいきなり空気バネを載せ、その上に車体を乗っけています。金属バネにはない、空気バネの左右方向の踏ん張りに期待したものです。見た目もシンプルで部品の数が減って大幅な価格低減に成功しエコノミカルトラックと名付けられました。
もっともこの形に落ち着くには少し苦労がありました。実は最初に登場したKS63型台車10両分が、2000系電車の昭和36年製造分から採用され、中低速では狙い通りの効果を発揮しましたが、90キロを超えるような高速になるとびびり振動が出て乗心地が悪くなりました。そこで、小改良したKS63A型台車14両分、さらなる改良型KS63C型台車10両分と造られましたが根本改良には至らず、設計を大きく変更して軸受まわりのゴムを厚くした改良版がこのKS73になり、漸く欠点が解消されたのです。KS63型も結局20年間ほど使われましたが順次KW69など新しい台車と交換され台車としては短命に終わりました。
一方改良型のこのKS73がエコノミカルトラックの完成型となり昭和41年製の2000系の最終製造分にとして9両分が採用されたほか、その後はKS76型、KS77型とほぼ同じ外観のままでチューニングを繰り返しながらの2200系、2400系、1000系、5000系3次車に至るまで電動車の標準台車として多数製造されています。(約120両分)
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アルバム: ◎こ)交通機関・鉄道・台車
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コメント (17)
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いやはや、凄く研究されていますね(^o^)/
2020年8月31日 18:02 vigorhmk (6)
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色々と変更、改良が加えられているのがわかりました。
安全運転が最優先となってようにお願いしたいものです。2020年8月31日 19:22 トクさん (10)
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がんちゃんさん
☆ありがとうございます。2020年9月4日 21:14 キューチャン (36)
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桜日和さん
☆ありがとうございます。2020年9月4日 21:14 キューチャン (36)
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BPさん
☆ありがとうございます。2020年9月4日 21:14 キューチャン (36)
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SuzumeExpさん
☆ありがとうございます。2020年9月4日 21:15 キューチャン (36)
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xkazexさん
☆ありがとうございます。2020年9月4日 21:15 キューチャン (36)
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中古のふさん
☆ありがとうございます。2020年9月4日 21:15 キューチャン (36)
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雨蛙0922さん
☆ありがとうございます。2020年9月4日 21:16 キューチャン (36)
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kameさん
☆ありがとうございます。2020年9月4日 21:16 キューチャン (36)
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みなみたっちさん
☆ありがとうございます。2020年9月4日 21:17 キューチャン (36)
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BSOさん
☆ありがとうございます。2020年9月4日 21:18 キューチャン (36)
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vigorhmkさん
☆とコメントありがとうございます。
全身機械仕掛けの蒸気機関車や気動車と違って電車のモーターはくるくる回るだけなので機構的にいちばんおもしろいのは台車ですね〜。2020年9月4日 22:11 キューチャン (36)
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トクさん
☆とコメントありがとうございます。
1960年台に開発されたこのエコノミカル台車ですが京阪以外にはあまり普及することなく時が流れました。ところが1980年代の半ばになって枕バネに大型の空気バネを採用する代わりに軸バネをゴムで簡素化する、という思想が、国鉄の台車にも取り入れられ、これに加えてボディーマウント方式といって空気バネを直接車体に繋いで大幅に軽量化されたボルスタレス台車という台車が開発されて大量に採用され最近の首都圏の通勤電車の大半が履くようになりました。ところが京阪電車にはこのボルスタレス台車はありません。
というのも空気バネのボディーマウントはカーブでの台車の首振りを妨げる方向の力が出るのと、台車自体の軽量化も曲線の入り口などで車軸の浮き上がりを誘発する、ということで曲線での脱線のリスクがやや高まる懸念があり、曲線のやたら多い京阪では採用は見送っているのだそうです。同じく曲線の多い宝塚線を抱える阪急も一時採用しましたが今はボルスタ付きに戻っています。どこの鉄道も自社線の特性をよく理解して安全面をおろそかにしない選択をしていると思われます。2020年9月4日 22:59 キューチャン (36)
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返事が遅くなりました。
台車が鉄道会社によって変わっている事がわかりました。
その構造については、文面だけでは理解しづらいです。(バカなもので)
詳細説明は、不要です。2020年9月8日 18:46 トクさん (10)
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トクさん
コメントありがとうございました。
目障りな程書きまして申し訳けありませんでした。m(_ _)m (^^ゞ2020年9月10日 20:37 キューチャン (36)
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KT9820さん
☆ありがとうございます。2021年9月19日 23:50 キューチャン (36)
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